加速器第六セクションの冨澤氏が西川賞を受賞
J-PARCセンター 加速器第六セクション(高エネルギー加速器研究機構 特別教授・名誉教授)の冨澤 正人氏が、2024年度高エネルギー加速器科学研究奨励会奨励賞の一つである西川賞を受賞しました。
高エネルギー加速器科学研究奨励会 西川賞は、加速器科学関連の研究分野において偉大な業績をあげられている西川 哲治 先生の功績を讃えて設けられた賞で、
高エネルギー加速器に関する実験的あるいは理論的な基礎研究ならびに応用研究において、独創性に優れ国際的にも評価の高い業績をあげた、単数または複数の研究者および技術者に対して与えられます。
今回の受賞は、「J-PARC 主リングにおける遅い取り出し運転の性能向上についての研究」に関するものであり、冨澤氏が、J-PARC MRの遅い取り出しの責任者として、詳細なビーム力学研究に基づくイオン光学設計、ハードウェアR&D、実機建設、実用運転を担い、99.6%という世界最高性能の取り出し効率を実現されました。
遅い取り出しにおいては、ビームロス量が取り出し可能なビーム強度を規定することになるので、取り出し効率を上げることが重要となります。独自で考案したdynamic bump スキームを導入し、またデバンチ時に生じるビーム不安定性の抑制など、高度なビーム制御技術を駆使して低ビームロス・ハイパワー運転(81kW)を確立されました。
ハドロン実験施設への取り出しビームスピルの安定性、時間構造の一様性など実験成果に直結するビーム質の点でも、高いレベルでビーム供給を実現され、COMET実験(μ→e変換過程探索実験)におけるユーザからの大変困難な要求(空バンチのビーム含有率1x10-10)にすでにビーム試験において応えるなど、高度なビーム取り出し技術により様々な実験に貢献されました。
2024年度の授賞式は、3月5日に行われます。今後、さらなる取り出し効率の改善、ビームスピルの時間構造の一様性の向上に向けての取り組みを進めることにより、より安定で高品質のビーム供給を目指します。
◇◆◇ 受賞のコメント◇◆◇
今回の受賞は、遅い取り出しグループの長年にわたる頑張り、MRを中心とした加速器関係者、ハドロンビームライングループのサポートに支えられたものです。皆様に感謝を申し上げます。