ゴン ウー氏が日本中性子科学会「奨励賞」を受賞
物質・生命科学ディビジョン中性子利用セクション研究副主幹のゴン ウー氏が、第20回日本中性子科学会「奨励賞」を受賞しました。この賞は、中性子科学に関して優秀な研究を発表した40歳未満の若手研究者に与えられるものです。
ゴン氏は、J-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) のBL19工学材料回折装置「匠」と英国ラザフォードアップルトン研究所工学材料回折装置ENGIN-Xの双方を活用して研究を実施しており、受賞は「パルス中性子回折を用いた先進構造材料の組織制御と力学特性に関する研究」の顕著な功績が高く評価されたものです。
鉄鋼材料は、多様な組織制御が可能であるために広範な力学特性を実現でき、最も重要な構造材料の一つと位置付けられています。ゴン氏は、鉄鋼材料の加工加熱処理中のその場中性子実験に取り組み、構成相比、炭素拡散、転位密度などの定量評価に成功するなど、力学特性に優れる鉄鋼の相変態促進方法を新たに見出し、「その場中性子回折法」が金属学研究において非常に有効であることを実証しました。さらに、実用金属中最軽量のMg合金の中で優れた力学特性を有するため構造材料として実用化が期待されているMg基LPSO (長周期積層構造) 相合金のバルク試料を用いた中性子回折により原子レベル構造を調べ、「LPSO相」が熱力学的に安定な相であることを明確にするとともに、Mg基LPSO型2相合金を構成するαMg相とLPSO相の相応力を世界で初めて定量化し、LPSO相が硬質相として振る舞うことを明らかにしました。