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2021.06.03

ニュートリノ施設標的を開発したChris J. Densham 氏が
英国物理学会の加速器科学技術賞を受賞されました

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標的を電磁ホーン内にとりつける作業中のDensham氏(写真中央)
(2020年1月J-PARCニュートリノ施設で撮影)

 

  J-PARCでニュートリノを生み出す標的やビーム窓などの開発に携わっている、英国ラザフォード研究所のChris J.Densham博士が、英国物理学会(Institute of Physics)の2021年加速器科学技術賞(Prize for Outstanding Professional Contributions - accelerator science and technology)を受賞されました。

    https://www.iop.org/get-involved/special-interest-groups/particle-accelerators-beams-group/prize-outstanding-professional-contributions

  J-PARCをはじめとする高エネルギー加速器施設では、加速器からの大強度陽子ビームを標的に打ち込んで、ニュートリノやミューオンなどの粒子を作り出していますが、標的はビーム照射が引き起こす過酷な発熱や衝撃、さらには照射損傷による材料の劣化にも耐える必要があります。Densham氏は英国ラザフォード研究所の大強度標的開発グループのリーダーとして優秀な技術者チームを率い、世界の先端高エネルギー実験用の標的開発に取り組み、先駆的な貢献を果たしてきました。なかでもJ-PARCが推進するT2Kニュートリノ振動実験にはコラボレータとして計画の草創期から現在にいたるまで中核的に取り組んでおり、ニュートリノ生成標的とその遠隔交換機構、陽子ビーム窓、バッフルコリメータやビームダンプハドロン吸収体といった機器の設計と開発には、Densham氏の高度な専門知識や、原子力・核融合炉材料研究などの異なる分野からの知見をも取り入れた、総合的なアプローチが活かされています。またDensham氏は次世代加速器の大強度ビーム照射にも耐える極限材料開発の重要性にいち早く着目し、その国際協力体制であるRaDIATE (Radiation Damage In Accelerator Target Environments)を、米国フェルミ国立加速器研究所やその他機関の技術者・研究者らとともに設立しました。

  J-PARCをもちいるハイパーカミオカンデ実験や、また米国DUNE実験などの次世代ニュートリノ振動実験に向けた、さらなる大強度ビームに耐える標的や陽子ビーム窓の開発において、Densham氏らのチームのさらなる活躍が期待されています。受賞おめでとうございます。