プレスリリース

2022.02.01

J-PARCプレス勉強会 「超低速ミュオンの夢が花開くとき~二刀流をめざすミュオン新ビームライン始動~」  (報道機関向け案内) 

J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構 (KEK)

  2022年1月にJ-PARC MLFで多彩なサイエンスを探求する新ミュオンビームラインが稼働しました。そこで繰り広げられるサイエンスを解説します。

2月8日(火)13:30~15:00オンライン開催
J-PARCセンター広報セクション pr-section[at]j-parc.jp まで
メールでお申込みください

  素粒子の標準理論を超える物理の探索や、生きた細胞まるごと1個の機能を観察するための二刀流の新兵器「超低速ミュオン※1」を実現する新ビームラインが大強度陽子加速器施設 (J-PARC) ※2に誕生しました。

  ミュオン (ミュー粒子) は、電子の約200倍の質量を持つ素粒子で、プラスの電荷を持つ正ミュオンとマイナスの電荷を持つ負ミュオンがあります。KEKは加速器技術を駆使し、光速に近いミュオンを逆に1万分の1にまで減速した超低速ミュオンの開発を進めてきました。速度を一旦落としたあと再加速するという手間をかけることで、新しい物理法則の兆候を探るg-2 / EDM実験※3ミュオニウム精密分光実験※4、電子顕微鏡より試料の内部を調べやすいミュオン顕微鏡※5による観察ができるようになります。

  今回のプレス勉強会は昨年4月の第1回メディアサロン「標準理論を超える新物理発見なるか!?ミュオンg-2 実験の最新情報を徹底解説」の第2弾です。新ビームラインで繰り広げられるサイエンスと技術について詳しく解説します。

 

スケジュール

2022年2月8日 (火) 13時30分~15時00分 (Zoom meetingにて開催)
13:30 - 13:45
概要説明 ~超低速ミュオンとは~
下村 浩一郎
資料 (PDF : 5.5MB)
13:45 - 14:00
ミュオンで探求する基礎物理
三部 勉
資料 (PDF : 23MB)
14:00 - 14:15
ミュオン顕微鏡で探る世界
永谷 幸則
資料 (PDF : 3.28MB)
14:15 - 14:25
S2, H1, H2実験エリアの紹介
河村 成肇    資料 (PDF : 34MB) 、山崎 高幸    資料 (PDF : 104MB)
14:25 - 15:00
質疑応答
 

 

登壇者

○ KEK 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系 研究主幹
下村 浩一郎 (しもむら こういちろう) 教授
○ KEK 素粒子原子核研究所
三部 勉 (みべ つとむ) 教授
○ KEK 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系
永谷 幸則 (ながたに ゆきのり) 特別准教授
○ KEK 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系
河村 成肇 (かわむら なりとし) 特別准教授
○ KEK 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系
KEK 素粒子原子核研究所
山崎 高幸 (やまざき たかゆき) 助教
 

 

参加申込み

  参加をご希望の方は、所属、氏名を明記の上、J-PARCセンター広報セクション (pr-section[at]j-parc.jp) までメールでお知らせください。お申込みいただいた皆様には、当日の午前中までにZoom入場URLのご案内をさせていただきます。

  申込み締切:2月7日 (月) 17時

  申込みについてのお問い合わせはJ-PARC広報セクションまで。

J-PARCセンター 広報セクション
Tel:029 -284 -4578
e-mail:pr-section[at]j-parc.jp

 

 

お問い合せ先

< 研究に関すること >

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系 研究主幹
教授 下村浩一郎
e-mail:ksimomu[at]post.kek.jp
 
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所
教授 三部 勉
e-mail:mibe[at]post.kek.jp
 

< 報道担当 >

J-PARCセンター 広報セクション
Tel:029 -284 -4578
E-mai:press[at]kek.jp
 
高エネルギー加速器研究機構 広報室
Tel:029 -879 -6047
E-mai:press[at]kek.jp
 

  ※上記の[at]は@に置き換えてください。

 

用語解説

 ※1 超低速ミュオン
  正ミュオンは、陽子のように振る舞い、電子を捕捉してミュオニウムという水素と似た構造を持つ粒子を形成する。超低速ミュオンは、加速器で生成した正ミュオンからミュオニウムをつくり、レーザーで電子を引きはがしたエネルギーの低いミュオンビームのこと。加速するとレーザー光のように指向性の高いビームを作ることができるので、高精度の測定が必要な基礎物理実験や顕微鏡観察などに適している。

 ※2 大強度陽子加速器施設 (J-PARC)
 KEKと日本原子力研究開発機構が茨城県東海村で共同運営している大型研究施設で、素粒子物理学、原子核物理学、物性物理学、化学、材料科学、生物学などの学術的な研究から産業分野への応用研究まで、広範囲の分野での世界最先端の研究が行われている。J-PARC内の物質・生命科学実験施設 (MLF) にあるミュオン科学実験施設 (MUSE) では、世界最高の質と強度を誇るミュオンビームを提供しており、世界中から研究者が集まっている。

 ※3 g-2 / EDM実験
  ミュオンの異常磁気能率 (g-2〈ジーマイナスツー〉) は素粒子標準理論の予想からのズレが示唆されており、新しい物理法則の兆候が見えているとして注目されている。電気双極子能率 (EDM) は時間反転対称性の破れを測定することにより、新しい物理法則を研究できる。

 ※4 ミュオニウム精密分光実験
  ミュオニウムの電子も水素原子の電子のように励起する。その励起エネルギーを詳細に調べる方法がミュオニウム精密分光法で、ミュオンの質量、磁気モーメントを精密に測定することができる。ミュオニウムを構成するミュオンも電子も素粒子なので、精度の良い理論計算が可能である。理論値と実験値を比較することで標準理論のほころびを探ることができる。

 ※5 ミュオン顕微鏡実験
  ミュオンビームを用いた顕微鏡のこと。電子顕微鏡の透過力では1 µm厚を超える切片試料の観察は難しいが、電子より約200倍重いミュオンは電子より高い透過力がある。「生きた細胞まるごと1個の機能を観る」という新たな顕微鏡イメージングの確立をめざす。また電子顕微鏡などでは得られない物質の磁気的性質に関する微細イメージを取得することができる。

 

関連資料

Panorama-SH

物質・生命科学実験施設(MLF)第1実験ホールのミュオンビームライン

【 JPG : 2.19MB 】

 

Panorama-S2inside

S2実験エリア内部に設置された装置。ミュオンビームは右から左に入射する

【 JPG : 1MB 】

 

EOS_3187

S2レーザーブースで作ったレーザーをS2エリアに入射する

【 JPG : 1.25MB 】

 

Panorama-H1inside

H1内部の様子。ミュオンビームは左の丸い穴から出てくる。右の緑色の壁の前にあるのが検出器。ミュオンの数を調べることができる。

【 JPG : 1.19MB 】

 

P5130008_m

ミュオン顕微鏡試作機の超低速ミュオン再加速部を調整している山崎高幸助教

【 JPG : 6.55MB 】

 

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