トピックス

2024.09.27

J-PARC News 第233号

PDF(645KB)

 

 

■J-PARCリニアック棟における溶融痕の確認について

 令和6年7月5日(金)のJ-PARCリニアック棟における溶融痕の確認により、多くの皆様にご心配、ご迷惑をおかけしたことについて深くお詫び申し上げます。
 この度、同事象発生の原因究明を行い、再発防止策を検討し、J-PARC全体の安全確認を行いましたのでお知らせします。

J-PARCセンター長 小林 隆

詳しくはJ-PARCホームページをご覧ください。https://j-parc.jp/c/information/2024/09/26001394.html

 

 

■プレス発表

 原子配列の乱れをもつフッ化物イオン導電性固体電解質のイオン伝導メカニズムの解明
 - リチウムイオン電池を凌駕する次世代蓄電池の創成を目指して -(9月6日)

 蛍石型構造を持つフッ化カルシウム-フッ化バリウム固溶体における伝導メカニズムを解析するため、熱プラズマ法でCa0.48Ba0.52F2固体電解質を作成しました。この電解質を、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)の特殊環境中性子回折装置「SPICA」を用いて中性子回折を行い、本系の原子配列と核密度分布を精密に決定しました。そして、異なるイオン半径をもつCaとBaが混合したことで構造歪みが誘発され、Fの原子配列が局所的に乱れることが分かりました。さらにフッ化物イオン伝導経路の可視化に成功し、Fの原子配列の乱れがイオン伝導率の向上に大きく寄与していることを明らかにしました。
 本系のイオン伝導メカニズムの解明によって、フッ化物イオン伝導体のイオンの流れに関する理解をより深めることができると考えられます。
詳しくはこちら(J-PARC HP) https://j-parc.jp/c/press-release/2024/06/27001362.html

news233_1.jpg

 

 

■J-PARCハローサイエンス「ハドロンをご存知か?」(8月30日)

 素粒子原子核ディビジョンの鵜養美冬氏が、ハドロンと強い力との関係やJ-PARCでの研究の展望を解説しました。
 物質の最小単位であるクォークは、単体で存在することができないため、複数のクォークが集まるハドロンとして存在しています。我々が良く知る陽子や中性子もハドロンであり、ハドロン同士は引力と反発力によって、お互いが引き合いすぎてつぶれることがなく、離れすぎてバラバラになることもなく、つかず離れずの絶妙な距離を保ち、この宇宙を構成しているのです。
 J-PARCでは大強度・高純度の負電荷K中間子(K-)のビームを用いて、ハイパー核と呼ばれる、通常にはないストレンジクォークを含んだ原子核を作り、原子核内のハドロン同士に働く「強い力」がどのくらいであるのかを調べています。この強い力を研究することで、原子核が存在し、物質が形成され、この宇宙が成り立っている謎に迫っていきたいと考えています。

news233_2.jpg

 

 

■ミュオンにコーフンクラブ 石室の位置と測定器の設置場所を考えよう(9月22日)

 空模様が心配な3連休中日、19名の参加者を得て、2024年度第4回「宇宙線ミュオンで古墳を透視プロジェクト」が実施されました。
 まず、茨城大学の田中裕氏が舟塚2号墳についてわかっていることと埋葬施設の種類について、次にJ-PARCセンターの藤井芳昭氏が測定器設置場所選定のポイントについて話をしました。それをもとに、①舟塚2号墳の石室はどこにあるのか、②測定器はどこに設置するのがよいかという2点について、グループワークで仮説をたて、現地調査でその仮説が成り立つかを確認しました。
 グループワークでは、司会者役の参加者がメンバーの意見をうまくまとめてグループの意見を集約し、発表者役の参加者が皆の前でグループの仮説の発表を行いました。その後舟塚2号墳に行き、田中氏や藤井氏とともにそれぞれの仮説を検証しました。平面図や写真では問題ないと考えたところも実際に現地で見てみると問題がある場合があり、現地調査をすることの重要性に気づいたようです。
 仮説を立て、それを成り立つか確かめるというプロセスは、研究者が常日頃行なっているプロセスです。今回の講座を通してそのプロセスを体験した参加者は、とても楽しそうでした。次回はいよいよ、測定器が設置されます。

news233_3.jpg

 

 

■「サイエンス×東海村×J-PARC展 」多くの皆様のご来場、ありがとうございます

 7月20日から9月29日まで東海村歴史と未来の交流館で開催された本企画展は、サイエンスラボや謎解きミッションなど、楽しいイベントが多数行われました。多くの皆様のご来場、誠にありがとうございます。

news233_4-1.jpg

 

news233_4-2.jpg

 

 

■東海村ジュニアアンバサダーの小中学生がJ-PARCを見学(9月14日)

 東海村ジュニアアンバサダー育成派遣事業の一環で小中学生がJ-PARCに訪れました。

news233_5.jpg

 

 

■ご視察者等

 9月13日 在東京タイ王国大使

 

 

≪お知らせ≫

■ J-PARC市民公開講座開催のお知らせ(10月14日、水戸市民会館)

 10月14日~18日に開催されるJ-PARCシンポジウムの初日、一般向けの市民公開講座「J-PARCが創る未来、探る謎 -次世代のエネルギーから宇宙まで-」を水戸市民会館で開催します。参加無料、事前登録不要です。ぜひお越し下さい。
J-PARC市民公開講座特設ページ https://j-parc.jp/symposium/j-parc2024/pub-lecture/

 

 

news219_sanpo.png



J-PARCさんぽ道 ㊿ -建設が進む実験機器開発棟-

 広報セクションの居室があるJ-PARC研究棟4階からは、現在、建設中の「SOKENDAI 共同研究拠点・J-PARC実験機器開発棟(J-PARC開発棟)」の工事状況がよく見えます。この建物は、総合研究大学院大学が提案大学、KEK他が連携機関として申請した「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」で採択され、予算措置されたものです。現時点では写真のように基礎を造っており、今年度内に竣工の予定です。
 J-PARC内では、2015年3月に竣工したJ-PARC研究棟以来、ちょうど10年ぶりの大規模な建設工事になります。J-PARCの広大な敷地には、3つの加速器、3つの実験施設が点在しており、各施設の移動には時間を要しています。J-PARC開発棟の最大の特徴は、約2,000m2近くの面積のオープンスペースを持つことです。この施設は、最先端の実験機器の開発や研究の拠点になるとともに、産学や地域との連携の拠点として、様々な研究分野の人々が集まることとなります。

news233_6.jpg