トピックス

2022.01.28

J-PARC News 第201号

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■小林隆J-PARCセンター長年頭挨拶

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 みなさま、明けましておめでとうございます。J-PARCセンター長の小林です。
 昨年も、コロナ感染症対策を皆で徹底することにより加速器の安全安定な運転を実施できたことを喜ぶとともに、皆様のご協力と努力にお礼申し上げます。J-PARCのサイエンスを一般の方にわかりやすくお伝えする努力も、昨年はリモートあるいはハイブリッド形式で行うことが多かったですが、オンライン施設公開は多くの方が視聴して下さいました。
 昨年夏からの保守期間を経て、物質・生命科学実験施設(MLF)は1月から利用運転を再開します。MR加速器は長期シャットダウン中で、新年度より調整を開始し、秋からは実験施設にビームを取り出しながらパワー増強に進みます。
 J-PARCの使命は、素粒子・原子核物理、物質・生命科学などの幅広い分野の研究を発展させ、宇宙・物質・生命の起源にまつわる謎に迫り、人類のQuality of Lifeの向上に貢献することです。より安全なJ-PARCを目指すための取り組みも継続して進め、安全管理をより一層向上させる努力を続けます。
 J-PARCの発展は、J-PARC構成員の努力とともに、世界中のユーザーの皆様の努力、関わって下さったすべての関係企業の皆様のご協力により成り立っています。コロナ感染症対策、国際情勢など不透明な状況が続いていますが、J-PARCの使命に今一度立ち返り、真摯に研究を続けたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和4年1月吉日 J-PARCセンター長 小林 隆

 

 

■プレス発表

 巨大な磁場応答を示す三角格子磁性半導体-三拍子揃った稀有な磁性材料の発見-(12月23日)

 半導体と磁性体の性質をあわせ持つ材料である磁性半導体は、電子のもつ電荷と電子のスピン(磁石の性質)の両方を利用して、高機能な電子デバイスへの応用が期待されます。従来の研究は、スピンの並び方が平行または反平行の磁性半導体に限られており、スピン同士が角度を持つ配置の磁性半導体が近年注目されています。
 東京工業大学の打田准教授らは、磁性を担うユウロピウム(希土類元素の1つ)が特徴的な三角格子を形成しているヒ化ユウロピウムEuAsに着目しました。J-PARCの中性子小角・広角散乱装置(大観)で偏極中性子を用いてその磁気構造を調べ、スピンの配置に関する情報を得たほか、系統的な測定を行い、EuAsが 1)低いキャリア密度、2)伝導キャリアと局在スピン間の強い交換相互作用、3)有限のスピンカイラリティ(スピン同士が角度を持つ配置であることを示す)という、巨大な異常ホール効果の実現に必要な三拍子が揃った稀有な材料であることを発見しました。ホール効果とは、電流と垂直な方向に磁場をかけた場合、電子が電流と磁場の双方に垂直な方向に力を受けることによって、その方向に電位差(電圧)が生じる効果で、磁性体ではホール電圧にスピンとの相互作用による寄与が加わり、これを異常ホール効果と呼びます。この効果を利用した半導体デバイスの実現につながることが期待されます。
詳しくはJ-PARCホームページをご覧ください。 https://j-parc.jp/c/press-release/2021/12/23000778.html

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■茨城大学-KEK DayでJ-PARCを見学(12月27日)

 茨城大学理学部、工学部、理工学研究科の学生20名が、最先端加速器による量子線科学のツアー「茨城大学-KEK Day」の一環として、J-PARCの見学に訪れました。
 参加者は2班に分かれ、リニアック棟クライストロンギャラリー、MLF、ハドロン実験施設、ニュートリノ実験施設を見学しました。理工学を専攻する大学院生でも、なかなか現場を見る機会はありません。J-PARCの巨大施設を見学することは、机上で理論を勉強する多くの学生にとって、自分たちの勉強を具現化することがイメージできたかと思います。これを機会に、多くの人がJ-PARCを始め、加速器や加速された粒子を使う実験施設に対し、更に興味を持っていただけることを期待しています。

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■日立シビックセンターで「親子で楽しむ科学教室」を開催(12月12日)

 日立シビックセンターで、親子で楽しむ科学教室「素粒子ってなあに?~知るとおもしろい小さな世界~」を開催し、小学生の親子とコマを使って素粒子の性質を一緒に考えました。
 J-PARCでは物質の最小単位である素粒子の研究をしています。素粒子はコマと似た性質を持っています。コマは回っている時に、軸がゆらゆらと回転します。この動きが歳差運動です。素粒子も磁石の力が働くところでは歳差運動をします。
 午前の部に8組、午後の部に7組の親子が参加しました。まず6個の方位磁石を並べ、その中心にコイルを置いて電流を流し、方位磁石の向きがどう変わるかを調べ、電流を流すと磁石の力が発生することを確かめました。次に紙皿とボルトでコマを作ってコマを回し、コマの重心を変えることにより、コマ全体の回転方向に対して歳差運動の方向が同じになるか反対になるのかを調べました。
 J-PARCではこのような教室を通して、子供たちの科学の眼が養われ、モノづくりの楽しさを味わえるよう、応援していきます。

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■J-PARCハローサイエンス「ついに稼働するミュオンHライン」(12月24日)

 12月のハローサイエンスも、いばらき量子ビーム研究センター(IQBRC)においてオンラインを併用して行い、物質・生命科学ディビジョンの山崎高幸氏が、ミュオンHラインについてお話しました。
 現在J-PARCのMLFにはD、U、Sラインという3種類のミュオンビームラインが稼働していますが、今年から新たな仲間であるHラインが加わります。Hラインは大強度で正負両方のミュオンを出すことが可能で、ビームエネルギーも可変な汎用性に優れたビームラインになります。2012年度から先頭部の整備を開始し、遮蔽の設置、受変電ヤードの建設等、約10年間の年月をかけてこの1月、ファーストビームを発生する予定です。
 このミュオンビームを照射することで、高精度が要求されるMuSEUMやDeeMeなどの基礎物理実験を行うことが可能となります。さらに将来はHラインを延長し、もうひとつの実験エリアを建設して、大強度かつ細い高輝度なミュオンビームを生成し、ミュオンg-2/EDM実験や透過型ミュオン顕微鏡などの実験を計画しています。

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■加速器運転計画

 2月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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■お知らせ

 国立科学博物館企画展 村山斉先生講演会動画公開

 国立科学博物館企画展の一環として行われた村山斉先生の講演会(2021年7月24日開催)のアーカイブが公開されました。
 「夢を追う道具:加速器」
カリフォルニア大学バークレー校MacAdams 冠教授 東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構教授 村山斉先生
こちらから是非ご覧ください。https://j-parc.jp/c/information/2022/01/11000783.html

 

 

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J-PARCさんぽ道 ⑲ -近くて遠い八間道路-

 J-PARCの敷地内に八間道路という砂地の道が続いています。J-PARCはここで分断されていて、人や車の行き来は八間道路の下をくぐることになります。J-PARCからこの八間道路に行くためには、一旦原子力科学研究所の正門を出て、国道245号線を南下し、大神宮と村松虚空蔵尊の脇を通る必要があり、4kmもの回り道をしなければなりません。J-PARCセンターの職員の多くは一日何度も八間道路をくぐって業務をしているのですが、八間道路を歩くことはほとんどないのが実情です。
 久しぶりに八間道路を歩くと、いつものJ-PARCの環境とは全く異なる世界に戸惑います。ここの砂は深く、足を取られ、歩くのに大変苦労します。中高生が部活動のトレーニングに使っているのはこのせいかもしれません。私たちが普段歩いているJ-PARC敷地よりも標高で数mしか高くないはずですが、天気のいい日には一面の松林の上に青い空が広がり、開放感に浸ることができます。ここで昼ご飯を食べると、ちょっとした旅行気分にもなります。
 大神宮や村松虚空蔵尊を参拝される方は、八間道路まで足を延ばし、海岸線まで歩いてはいかがでしょうか。そして、八間道路の両側に点在するJ-PARCの施設に興味を持たれたら、コロナ禍が収束した後、ぜひJ-PARCをご見学ください。八間道路から見る風景とは全く違う世界が見られます。

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