トピックス

2023.11.24

J-PARC News 第223号

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■受賞

(1)東北大学市川氏が仁科記念賞を受賞(11月7日)

 前T2K実験代表の市川温子氏(現東北大学 大学院理学研究科 教授)が、「ニュートリノ振動におけるCP 非保存位相角δへの制限」の業績題目で、2023年度仁科記念賞を受賞しました。
 T2K実験は、世界12カ国から500人を越える研究者が参加する国際共同実験です。市川氏は、J-PARCニュートリノ実験施設の初期設計開発から携わり、特に電磁ホーンと呼ばれる装置の開発で中心的な役割を果たすなどしました。

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(2)日本金属学会2023年秋期講演大会にて優秀ポスター賞を受賞(9月21日)

 日本金属学会は、最新の研究成果を発表・討議する場を提供することを目的として、毎年春と秋の2回、講演大会を開催しています。2023年秋期講演大会は富山大学で行われ、270件を超えるポスターセッションの発表から、J-PARCセンターの職員、東北大学と名古屋工業大学の共同利用者がそれぞれ優秀ポスター賞を受賞しました。
 受賞した3件の研究はJ-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)にある、工学材料回折装置「TAKUMI」を用い、TAKUMI実験装置担当者と共同で行われました。
 受賞者の氏名及び受賞研究内容は、以下の通りです。

「その場中性子回折法による超微細粒ステンレス鋼の極低温での優れた強度と延性の研究」
 マオ ウェンチ氏、ゴン ウー氏、ハルヨ ステファヌス氏、川崎 卓郎氏(JAEA J-PARCセンター)
 ガオ シ氏(京都大学)

「Cu-Al-Mn 合金における極低温弾性熱量効果の直接測定」
 許 勝氏、許 皛氏、大森 俊洋氏、、貝沼 亮介氏(東北大学)、宋 雨鑫氏(東北大学 大学院生)
 伊東 達矢氏、川崎 卓郎氏、ハルヨ ステファヌス氏、ゴン ウー氏(JAEA J-PARCセンター)

「Mg/LPSO 複相合金における組織と引張変形挙動の相関」
 山本 和輝氏、杉田 三佳氏(名古屋工業大学 大学院生)
 徳永 透子氏、萩原 幸司氏(名古屋工業大学)
 眞山 剛氏、山崎 倫昭氏(熊本大学)
 ハルヨ ステファヌス氏、ゴン ウー氏(JAEA J-PARCセンター)

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(3)茨城テックプラングランプリで最優秀賞を受賞(11月4日)

 JAEA職員で構成された「チームゲタポン」が第7回茨城テックプラングランプリで最優秀賞を受賞しました。毎年、茨城県内にあるユニークな技術力を発掘し、事業化に向けた支援を進めることを目的に茨城テックプラングランプリが開催されています。
 チームゲタポンは、新たな真空ポンプの技術として、チタンが持つ、気体分子を吸着する作用を使って排気をすることで、大型の真空ポンプを使わずに超真空状態の生成を可能にしました。この省エネ、省スペースの超真空ポンプは半導体製造や材料開発をはじめ、様々な分野に幅広く貢献できることが期待されます。

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■プレス発表

 室温で作動するH-導電性固体電解質の開発
 -電気陰性度の低いカチオンの導入が電解質作動を可能に-(10月20日)

 理化学研究所、KEK、ファインセラミックスセンター、J-PARCセンターらの研究グループは、負の電荷を持つ水素“ヒドリドイオン(H-)”の伝導により室温で固体電解質として作動できる新材料の開発に成功しました。
 電池には、動作する温度領域において高いイオン導電率と優れた電気絶縁性を兼ね備える電解質が求められます。固体電解質は、現在一般に利用されている液体の電解質において問題となる液漏れや発火のリスクが低いほか、急速充電が可能になる、エネルギー密度が高い、幅広い温度域で安定して性能を発揮できる、劣化しにくいなど、多くのメリットが期待されています。一般に固体は室温におけるイオン導電率が非常に低いものの、これまでも様々な固体電解質が開発されてきました。今回研究対象とした固体電解質の母物質であるLaH3-δは室温で高いイオン導電率を持つものの、電気絶縁性が劣ることが難点でした。
 本研究では、LaH3-δのランタン(La3+)の一部をストロンチウム(Sr2+)で置換したH-導電体Sr-LaH3-δを合成し、J-PARC MLFの「SPICA」で粉末中性子回折測定し結晶構造を決定しました。さらに、室温での定電流放電試験において、固体電解質として機能することが実証されました。
室温で高いイオン導電率と優れた電気絶縁性を両立させた本固体電解質は、今後、新しい作動原理の二次電池や電気化学的水素貯蔵システムなど、室温付近での動作が想定されるH-導電型電気化学デバイスの研究開発へ展開できると考えられます。
詳しくはJ-PARCホームページをご覧ください。 https://j-parc.jp/c/press-release/2023/10/20001222.html

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■フォトコンテスト2023を開催(10月11日)

 第10回J-PARCフォトコンテストを開催しました。外部から審査員を迎え、43の応募作品に対して厳正なる審査を行った結果、最優秀賞は、京都大学大学院 原子核ハドロン物理学研究室の原田健志氏が受賞しました。
 グザイハイパー核の精密分光実験に使用する有感標的を撮影したこの作品は「画面の外側までも見る人に想像させる力を持った写真と言えるでしょう。」と、外部審査員より講評をいただきました。
 本コンテストで入賞した作品は、カレンダー等、J-PARCの広報素材として使用する予定です。

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■J-PARCハローサイエンス「重イオンビームで超高密度物質をつくる?」(10月27日)

 今回は先端基礎研究センターの佐甲博之氏が講師を務め、J-PARCで将来計画として検討している、重イオンを加速する計画「J-PARC Heavy-Ion Project, J-PARC-HI(ジェイパーク・ハイ)」について紹介しました。この計画では、重イオンビームにより原子核衝突実験を行い、超高密度物質を生成し、その性質を解明しようとしています。
 宇宙最高の超高密度物質は中性子星の中心部とされ、その密度は原子核の5〜10倍に当たる1015g/cm3程であると言われています。J-PARC-HIにより、原子核を圧縮することで、地上でも人工的に超高密度物質を創ることができます。ここでは、世界最高強度の重イオンビームを金などの標的に照射し、重い原子核同士を衝突させます。J-PARCの重イオンビームのエネルギーは核子当たり約12GeVで、原子核の圧縮に最適なエネルギーであり、原子核同士を最大で6〜8倍の密度に圧縮できるのです。
 J-PARC-HIの主な目的の一つに、ハドロン/クォーク物質の相転移の探索があります。現在、高密度での相転移は第一原理からの理論計算が困難なこともあり、未解明の機構が多く残っています。J-PARC-HIの原子核衝突実験により、理論的に予言されてから20年以上未発見の相転移線、臨界点、カラー超伝導相等の発見や、南部理論によるハドロン質量生成機構の検証などを目指しています。他にも、重イオン衝突実験から中性子星の謎に迫る研究や、大量に生成するストレンジクォークを利用して多ストレンジクォークを持つ未知の粒子・原子核の発見など、様々な成果につなげたいと考えています。

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■青少年のための科学の祭典日立大会に出展 (10月29日)

 青少年のための科学の祭典は「科学や理科が好きで好奇心に溢れた子どもの育成」と「次世代の科学技術を担う人材の育成」を趣旨とし、未来の科学者へ「わくわく どきどき 科学体験!」を提供する素晴らしい機会となっています。会場では魅力溢れる科学実験教室などが数多く出展され、大会全体で約3,000名の来場者があり、大盛況でした。
 J-PARCでは、磁場に電流が流れると力を受けて銅線がくるくる回る単極モーターの工作教室を行いました。子どもたちは銅線の形を工夫しながら、夢中で実験に取り組みました。中高生や保護者の中には、J-PARCの紹介に熱心に耳を傾けてくれる方も多く、私たちの研究に対する関心の高さが伺えました。当日はブースのハロウィン装飾や特製缶バッジの配布などを行い、好評でした。

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■センター長がマレーシアで講演(10月22日~25日)

 小林隆J-PARCセンター長が、総合研究大学院大学の広報活動の一環として、マレーシア工科大学、マレーシア国民大学、マレーシア原子力庁などで講演を行いました。J-PARCの概要や研究、今後期待できる成果等について講演し、今後の研究協力の可能性を議論、またSOKENDAI KEK Tsukuba/J-PARC Summer Student Programなど、マレーシアの学生や研究者がJ-PARCでの研究に参加できる機会の紹介も行いました。
 本講演を契機に、今後マレーシアの学生や研究者との関係がさらに深まることを期待しています。

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■第8回文理融合シンポジウム開催(11月2〜3日、国立科学博物館)

 J-PARCのMLFで発生する世界最高強度の負ミュオンビームは、文化財をはじめとする人文科学資料の研究にも活用されています。このような量子ビームを利用する文化財研究者による文理融合研究の可能性を探るため、KEK物質構造科学研究所では、2019年度から毎年、文理融合シンポジウムを開催しています。
 今回は国立科学博物館 上野本館で、「量子ビームで歴史を探る-加速器が紡ぐ文理融合の地平-」が開催されました。参加者は約70名で、貨幣、金属、小惑星・隕石、古墳、津波といった多岐にわたる12件の口頭発表がありました。2日目の午後には一般講演会が行われ、3件の講演がありました。一般講演会では会場だけでなく、約110名のZoom参加者からも質問が寄せられ、関心の高さが感じられました。

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■記者向けJ-PARC施設見学会開催(11月14日)

 11月14日、記者向けJ-PARC施設見学会を行いました。3社、4名が参加しました。

 

■加速器運転計画

 12月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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J-PARCさんぽ道 ㊵ -打ち上げ花火とJ-PARC-

 写真は11月4日に開催された土浦全国花火競技大会のひとコマです。60万人もの観衆が見守る中、およそ2万発の花火が打ち上げられました。夜空という巨大なキャンバスに思い思いの花が開くと、歓声があがり、拍手が湧き起こります。それと同時に、一瞬にして漆黒の闇に消え去る花火に、はかなさの美を感じた人も多いかと思います。しかし優れた花火は打ち上げられた後も私たちの脳裏に焼き付き、思い出となって蓄積されていきます。
 J-PARCの物質・生命科学実験施設では世界最高強度の中性子とミュオンのビームを創り出しています。そのビームは試料に当たった瞬間やその直後に消えてなくなりますが、そこで得られたデータは、詳細に記録されています。スターマインは何百個もの花火が積み重なってひとつの作品となっています。J-PARCでは 世界最高強度の中性子やミュオンのビームを次々と試料に当て、そこから得たデータを積み重ねることにより、車載用燃料電池の性能、新しい合金材料の性質、文化財から小惑星リュウグウまでの組成などを解析することができるのです。
 土浦の花火大会は競技大会であり、花火技術の向上を図る場でもあります。花火師の皆さんは、次の大会に向けて既に技を磨き始めていることでしょう。J-PARCでも、より強力で使いやすいビームを創り、それを有効に利用して更なる研究成果が出るように、努力を続けます。

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