■ J-PARC News 第158号より       (2018/06) 
●J-PARC安全の日 (5月25日、J-PARC研究棟及び原子力科学研究所・大講堂) 
  ハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故 (平成25年5月23日) の教訓を風化させることなく、職員の安全意識を高めるために、毎年、J-PARCセンターでは安全の日を設けています。今年は5月25日を安全の日として、午前は「安全情報交換会」を、午後は「5.23安全文化醸成研修会」を開催しました。情報交換会では、良好事例の表彰、安全に関するサイエンストーク、施設における安全作業の紹介が行われました。研修会では、トヨタ自動車安全健康推進部主幹の星野晴康氏を迎え「トヨタの自動化時の安全対応と安全文化構築」と題した講演をしていただきました。さらに、漏えい事故に関する記録映像上映の後、J-PARCセンター安全ディビジョンの宮本幸博ディビジョン長が「漏えい事故を振り返って」と題した講演を行いました。

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●「宇宙線ミュオン」が電子機器の誤動作を引き起こす 〜超スマート社会の安全・安心を支えるソフトエラー評価技術の開発に向けて〜 (5月27日、プレス発表) 
  パソコンなど電子機器の誤動作や故障の原因の一つとして、ソフトエラーと呼ばれる一過性のエラーがあります。その要因に、地上に降り注ぐ宇宙線が電子機器に衝突して生じる半導体デバイスのビット情報反転があります。九州大学やJ-PARCセンターなどからなる共同研究チームは、物質・生命科学実験施設 (MLF) のミュオン実験装置 (MUSE) で、半導体デバイスに対するミュオン照射試験を行い、正ミュオンよりも負ミュオンの場合の方が、メモリ情報のビット反転の発生確率が高くなることを実験で初めて明らかにしました。今後、より安全性の高い自動車の自動運転化の分野で役立つ、半導体技術の進歩に貢献することが期待されます。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の助成を受けたもので、2018年5月24日に「IEEE Transactions on Nuclear Science誌 (電子版) に掲載されました。
  詳細はJ-PARCホームページをご覧ください。
http://j-parc.jp/ja/topics/2018/press180427.html

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●レーザ荷電変換試験 - 連続ビームの取り出しに成功 -  (3月、リニアック棟) 
  J-PARCセンターが計画する、加速器駆動核変換システム (ADS) 開発のための核変換実験施設では、リニアックで加速された250kWの大強度負水素イオン (H-) ビームから最大10Wの微弱陽子ビームを取出して使用します。このため、レーザで一部のH-の電子を剥ぎ取り、これを偏向電磁石で分離して微弱陽子ビームとして取り出す技術の開発を進めてきました。今回、リニアック初段加速器 (RFQ) テストスタンドにて、昨年成功した短パルスレーザによる幅10nsの短パルス陽子ビームの取出しに引続き、ADS運転時を想定した連続レーザによる連続陽子ビームの取り出しにも成功し、必要なビーム取り出し技術を確立しました。
※Accelerator-Driven nuclear transmutation System

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●2018年国際量子線科学シンポジウム (5月30日〜6月2日、茨城大学 水戸キャンパス) 
  茨城大学は、2016年から世界の量子線科学を牽引する研究者らを招いて、国際量子線科学シンポジウムを定期的に開催してきました。第3回目となる今年は、5月30日から6月2日にわたり、生命現象の原子レベルでの解明やソフトマターの物性研究と応用を主なテーマとして、量子ビームをプローブとしたさまざまな分野での研究に関する講演がありました。約60名が参加、J-PARCセンターからは中性子利用セクションの河村聖子氏が、μSRによる量子スピン系Rb2Cu2Mo3O12の磁気基底状態とダイナミクスの研究についての講演を行いました。
※ミュオンスピン回転/緩和/共鳴は、スピン偏極したミュオンを物質中に注入し、ミュオンスピンの感じる内部磁場の大きさや揺らぎを実時間で捕らえることにより物質の様々な性質を明らかにする手法です。

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●ニュートリノ国際会議 (NEUTRINO2018)  (6月4日〜9日、ドイツ・ハイデルベルク) 
  6月4日〜9日、ドイツのハイデルベルクで開催されたNEUTRINO2018において、T2K国際共同実験グループのM.Wascko氏 (インペリアル大学ロンドン、英国) が、昨年夏以降から2017年12月末までに収集したデータを含めた解析結果、T2K実験の将来計画などを報告しました。T2K実験では、反ニュートリノビームを使った実験データがこれまでの50%増になり、粒子と反粒子の性質の違い (CP対称性の破れ) を検証する解析成果は、他国を先導しています。実験結果の公開に合わせてニュートリノセクションの関口哲郎氏が、国際会議での報告内容をKEK/J-PARCセミナーにて紹介しました。また、今年5月末までに収集した反ニュートリノビームデータ (さらに50%分が追加) を使った解析結果については、今年秋に開催される国際会議で報告する予定です。

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●KOTO実験コラボレーションミーティング開催 (6月13-15日、J-PARC) 
  ハドロン実験施設でKOTO実験を推進している国際共同研究者が集まり中性K中間子の稀崩壊実験の研究の推進を図る会議が、昨年12月に続いて、日本、アメリカ、韓国、台湾などから37名の研究者が参加して開催されました。会議では、7月の高エネルギー物理学国際会議や共同利用実験課題審査委員会に向けてデータ解析、現在行われているビームタイムでのデータ収集、今夏に行う検出器増強の準備状況などについて報告と活発な議論が行われました。

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●大強度陽子加速器における先端標的・窓材料のワークショップ (5月31日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」 ) 
  5月31日、アイヴィルでJ-PARCセンターミュオンセクションの牧村俊助氏、ニュートリノセクションの石田卓氏、MLFの若井栄一氏が中心となって、大強度陽子加速器施設における先端標的・窓材料のワークショップを開催しました。高エネルギーの陽子照射が、標的材料や窓材料に与える損傷効果は、原子炉や核融合施設で想定される低エネルギー中性子による照射効果とは異なりますが、共通する課題も多く、今回J-PARCセンター主催のワークショップとして、加速器標的や最先端の材料開発における照射効果研究に携る関係者が集まり活発な議論を行いました。新たな協力研究の立上げも検討され、今後の展開が期待されます。

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●第21回超イオン導電体物性研究会 (第70回固体イオニクス研究会、6月1〜2日、IQBRC) 
 
  6月1日〜2日、第21回超イオン導電体物性研究会 (第70回固体イオニクス研究会) が、いばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) で開催されました。この研究分野では、古くから中性子・ミュオン利用の有効性が示され、幅広い研究が進められています。本研究会では、研究者による最新の研究成果の報告や、施設関係者による最新の装置の紹介が行われ、活発な議論を通じ、研究者間の交流が深まりました。また研究会前日には、J-PARC見学ツアーを行い、好評を博しました。

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●J-PARCハローサイエンス『中性子で地球深部の「水」を調べる』 (5月25日、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」) 
  5月のサイエンスカフェでは、中性子利用セクションの服部高典氏が、『中性子で地球深部の「水」を調べる』と題して、中性子を用いた最新の高圧地球科学研究について講演しました。地球の表層には海水として多くの水が存在していますが、内部にもそれに匹敵する、あるいはそれを遥かに凌ぐ量の水があると考えられています。このような水が、どこにどのような状態で、どのくらい蓄えられているのか、そしてそれらがプルームテクトニクスなどの地球のダイナミクスにどのように影響しているのかは未だ解明されていません。超高圧中性子回折装置「PLANET」が、それらを調べる目的で作られ最近の研究例とともに紹介されました。
※マントルの対流を総合的に解釈する理論

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●ご視察者など
 
    5月 30日  2018年国際量子線科学シンポジウム参加者
   

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