■ J-PARC News 第144号より       (2017/04) 
●平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞
〜住友ゴムのSPring-8/J-PARC/京の連携と先進タイヤ開発〜
  平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、J-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) のユーザーである住友ゴム工業株式会社の岸本浩通 研究開発本部分析センター課長らの研究グループが、開発部門の科学技術賞を受賞しました。MLF等を活用して生み出した新材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」を採用し、新しい低燃費タイヤを開発した業績が評価されたものです。研究チームは、ゴムの内部構造をナノからミクロンレベルまで連続的かつ鮮明に解析、シミュレーションし、タイヤの低燃費性能とグリップ性能を高次元で維持しながら耐摩耗性を従来品から51%向上させました。開発した低燃費タイヤはすでに製品化されています。

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●第49回日本原子力学会論文賞を受賞 (3月28日、東海大学湘南キャンパス) 
〜水銀ターゲットにおける圧力波低減のための気泡生成装置の開発に関する掲載論文〜
  3月28日、J-PARCセンター中性子源セクションの粉川広行氏、直江崇氏が、筑波大学教授の京藤敏達氏とともに、第49回 (平成28年度) 日本原子力学会論文賞を受賞しました。J-PARCでは、大強度の陽子ビームを液状の水銀ターゲットに照射して中性子ビームを発生させますが、水銀中では急激な圧力上昇が生じて水銀の容器に損傷を与えます。今回論文賞を受賞した粉川氏らの研究グループは、流れている水銀の中に小さなガス気泡を注入し、この気泡がクッションのような役割をして急激な圧力上昇を低減する技術を開発しました。この技術開発は、筑波大の京藤氏が霞ケ浦など湖沼の水質浄化を目指して開発していたマイクロバブル生成器の特性を詳細に調べ、水ではなく流れている水銀でも使えるように最適化することで達成しました。

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●平成28年度日本中間子科学会の奨励賞を平石氏・岡部氏の両氏が受賞 (3月19日、日本中性子科学会) 
  J-PARCセンターミュオンセクションの平石雅俊氏 (KEK研究員) と岡部博孝氏 (KEK助教) が、平成28年度の日本中間子科学会「若手奨励賞」と「奨励賞」をそれぞれ授賞し、 3月19日に大阪大学豊中キャンパスにて行われた当学会総会において表彰されました。これらの賞は、中間子科学の発展に貢献しうる優秀な論文を発表した会員を称え、学会をより活性化するために制定されているものです。平石氏については「ミュオンスピン回転・緩和法による鉄系超伝導体の研究」の業績が、また、岡部氏については「µSRによるスピン軌道相互作用誘起モット絶縁体の超伝導化に関する研究」の業績が評価されました。今後、磁性・超伝導研究の分野においての研究、中間子科学コミュニティの発展などへの活躍が大いに期待されます。
  詳細は、KEK物質構造科学研究所のホームページをご覧ください。
  http://www2.kek.jp/imss/news/2017/topics/0327muon&meson-award/

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●数学のグラフ解析を用いて、新物質の結晶構造を解く手法を開発 (4月20日、プレス発表) 
  山形大学の富安亮子准教授とJ-PARCセンター中性子利用セクションの神山崇 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 教授は、粉末X線・中性子線回折測定装置より得られる実験データ解析に、グラフの解析に関わる数学理論を適用することで、従来のものと比較して結晶格子決定の成功率・計算効率ともに大きく改善されたソフトウェアを開発しました。粉末回折測定装置は、製造企業や試験研究機関で日常的に使われ、本成果は新物質開発のスピードを向上させる重要な鍵になります。なお、神山氏はJ-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) の超高分解能粉末中性子回折装置 (SuperHRPD) の装置責任者です。本研究の成果は、国際結晶学連合が発行する学術誌Journal of Applied Crystallographyの2017年4月号に掲載されます。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/Press170420.html
   
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●T2K実験Run8を終了、陽子照射数2.25x1021 個を達成
 
  2010年にデータ取得を開始したT2K実験グループは、2017年4月12日、通算で8期目となる実験「Run8」を終了しました。今回のRun8の期間中、MR (Main Ring) の30GeV定常運転でのビーム強度は470kWに達し、終了日には、511kWという大強度のビームをニュートリノビームラインに取り出す試験も初めて行いました。加速器のビームパワーが格段に上がった結果、今回のRun8期間中では期間あたり最高となる7.26×1020個の陽子を、また2010年1月の実験開始後から通算して2.25×1021個の陽子をグラファイトターゲットに照射することに成功しました。この陽子数は、Run7までに取得した数に比べて約50%増加しており、ニュートリノを用いた実験データがほぼ倍増しました。今回のRunで取得したデータは、国際共同実験グループで解析作業と議論を重ね、この夏に開催される国際会議やセミナーなどで研究結果を発表する予定です。
  詳細は、J-PARCホームページをご覧ください。
  http://j-parc.jp/ja/topics/2017/topics170412.html
   
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●第22回先進中性子源国際会議「ICANS XXII」 (3月27〜31日、英国・オックスフォード) 
 
  3月27日から31日にかけて、最新の中性子源、中性子実験装置についての国際協力を議論する国際会議「ICANS」が英国・オックスフォードで開催され、世界20カ国から約280人が参加しました。J-PARCセンターからは、中性子利用セクションの中島健次リーダーらが、J-PARCの中性子源、実験装置、2015年以降の線源での一連の不具合や復旧の経験、また、MLFに設置された最新の装置RADEN (エネルギー分析型中性子イメージング装置) とそこで得られた成果などを報告し、参加者と活発な議論を交わしました。
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●J-PARC ワークショップ「Neutron Biology for Next Generation」開催 (3 月22日、IQBRC) 
  3月22日、J-PARCセンターは、京都大学原子炉実験所の杉山正明教授を組織委員長とする「Neutron Biology for Next Generation (次世代中性子生物学ワークショップ) 」をいばらき量子ビーム研究センター (IQBRC) にて開催しました。欧州の新進気鋭の中性子生物研究者であるRalf Biehl博士 (JCNS※1) とFrank Gabel博士 (IBS※2) を迎え、日本の中性子生物研究者・関連研究者を含む40名が一堂に会し、装置と研究の両面から、研究報告と円卓会議による議論を行いました。J-PARCセンターからは、中性子利用セクションの高田慎一氏らがMLFのビームラインや、利用実験について話しました。
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 ※1:Jülich Centre for Neutron Science (ドイツ) 
 ※2:Institut de Biologie Structurale (フランス) 
   
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●第58回科学技術週間と科学技術の「美」パネル展 (4月17〜28日、東京) 
  17日から23日に開催の第58回科学技術週間の最終日、科学技術館で開催されたサイエンスカフェでJ-PARCセンター広報セクションの坂元眞一氏、宇津巻竜也氏が「ナミナミならぬ波のパワー〜水の波から素粒子へ宇宙へ」と題して、"波"をテーマにした講演と科学実験を行いました。J-PARCなどが進めるT2K実験でのニュートリノ振動について、音を使った波の実験などに参加者が関心を寄せていました。また、宇津巻氏撮影の「世界最高強度のミュオン崩壊陽電子を捕まえる検出器たち」が、科学技術の「美」パネル展に入選、25作品の一つに選ばれて17日から28日まで文部科学省情報ひろばに展示されました。

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●J-PARCハローサイエンスを西東京市で開催 (3月29日、西東京市) 
  3月29日、"ナミナミならぬ波のパワー"をテーマに、ハローサイエンスを西東京市で開催しました。「創造的思考の工房 チビッ子アトリエ」の小学生メンバーとお母様方、中高校生のOB・OG、総勢40名が集いました。数多くのストローをセロハンテープに根気よく貼り付けウェーブマシンを完成、波の動きを観察しました。分光シートを使った光の万華鏡はみんなのお気に入り、蛍光灯や青空に向けて、虹の違いを発見しました。

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●ご視察者など
     4月 10日  文部科学省 研究振興局 岸本 哲哉 基礎研究振興課長 他
   
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●加速器運転計画
  5月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更になる場合があります。

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