■ J-PARC News 第125号より       (2015/09) 
●BL03「iBIX」での中性子利用実験でタンパク質の多彩さ・巧妙さの可視化に成功
  東京大学のグループは、茨城大学、茨城県などとの共同研究により、物質・生命科学実験施設 (MLF) の茨城県生命物質構造解析装置「iBIX」を利用した中性子回折実験によって、 "きのこ"が生産するセルラーゼという酵素の水素原子情報を含む構造解析に世界で初めて成功し、酵素の反応メカニズムを明らかにしました。

  セルロースは植物の主成分で、地球上で最も豊富に存在するバイオマスです。それらを効率よく分解し様々な物質に変換する技術の開発が望まれています。自然界では様々な生物が出すセルラーゼによって、セルロースは効率よく分解されます。今回の実験では、きのこのセルラーゼの反応の重要な領域が特殊な構造をしており、その周辺を水素原子がカチカチ玉のように連鎖的に移動することで酵素反応が繰り返されることが分かりました。今回の結果は、バイオ燃料やプラスチックを安価に作る技術開発につながるだけでなく、創薬への応用も期待されます。

  この成果については、21日に米国科学雑誌「Science Advances」に掲載されました。詳細については、茨城大学のホームページhttp://www.ibaraki.ac.jp/news/2015/08/201331.htmlをご覧ください。



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●HYP2015第12回ハイパー核・ストレンジネス核物理国際会議 (9/7〜11、仙台市・東北大学) 
  3年に一度開催される、ハイパー核・ストレンジネス核物理国際会議の第12回大会 (HYP2015) が、 仙台市東北大学で9月7から11日に開催されました。20ヶ国以上から約170名が参加し、プレナリーセッションと3つのパラレルセッション及びポスターセッションで成果報告が行われ、講演は全体で115講演となりました。ハドロン実験施設は、ハイパー核・ストレンジネス核物理の中心的な実験施設で、実験に関わる51講演のうち、18講演がJ-PARCの実験に関するものでした。また、ハドロン実験施設の利用運転再開 (今年4月) 後の6月までのビームタイムで取得した実験成果も発表され、非常に高い評価を受けました。最終日には、齊藤直人J-PARCセンター長がストレンジネス核物理を始めとしたハドロン実験施設におけるこれまでの実験を中心に、J-PARCにおける実験の成果を総括して報告しました。

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●第2回大型実験施設とスパコンとの連携利用シンポジウム (9月2日、秋葉原) 
   - ソフトマター科学を中心として -
  高輝度光科学研究センター (JASRI) 、総合科学研究機構 (CROSS) 、高度情報科学技術研究機構 (RIST) 、および計算物理科学イニシアティブ (CMSI) の共催による標記シンポジウムが開催されました。J-PARCセンターなどは協賛で参加しました。

  本シンポジウムは、SPring-8、MLF等の大型実験施設と「京」などのスーパーコンピュータとの連携利用による研究成果創出につなげることを狙うもので、その利用促進のため昨年に引き続き開催され、80名を越える方々が参加されました。

  今回は、高分子物質などソフトマター科学を中心とした、連携利用事例について2件、今後の連携利用を見据えた実験側/計算側からの研究について4件、の紹介が行われました。最後に、名古屋大学増渕雄一教授の司会のもと、「連携利用推進の課題」について、発表者によるパネル・ディスカッションが行われました。パネリストの方々から事前に、1) 実験/計算の連携とは?、 2) 実験/計算連携のカギは?、 3) 大型施設利用の利点・問題点、4) 連携に向けた課題は?について頂いた意見がスライドで紹介され、5) 会場とのディスカッションを交えながら、活発な意見交換が行われました。
   


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●核セキュリティ用ヘリウム3代替中性子検出器の実証試験で高い評価
   ヘリウム3 (3He) ガスを用いた検出器は中性子計測において広く使用されていますが、近年の 3Heガス供給不足により代替検出器開発が国際的な急務となっています。中性子基盤セクションでは、代替検出器の開発を進めるなかで、これまで培ってきたシンチレータを用いた中性子検出器と計測技術を応用して、保障措置用代替検出器の開発を行いました。今年3月にはIAEA、JRC (共同研究センター) 、DOE (米国エネルギー省) の保障措置関係者立ち会いでの性能試験において、標準3Heガス検出器と比較して80%の高い効率を実証し、非常に高い評価を受けました。
※文科省核セキュリティ強化等推進事業「ヘリウム3代替中性子検知技術開発」 (H23〜H26) 


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●施設の状況
  1. 加速器運転計画
   10月の運転計画は、次のとおりです。なお、機器の調整状況により変更が生じる場合があります。
   


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   2. 実験施設関連
   (1) MLFでは、9月14日に新しい水銀ターゲット容器を納入し、ターゲット使用後保管容器への実装テストを行いました。今後、遠隔操作によるターゲット容器の交換作業に入る予定です。
   (2) 50GeVシンクロトロン (MR) では、今後、現行より速い繰り返しで陽子ビームの入射・加速・取出しを行うため、陽子加速器開発棟で新しい入射セプタム電磁石と電源の試験を実施しています。
   (3) ハドロン実験施設では、実験ホール建屋に隣接した南実験棟の3階で、次回の利用運転に向けて運転管理室を整備中です。
   


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●"走れ!回れ!磁石のパワー" 図書館まつりで、J-PARCハローサイエンス! (8月29日、東海村立図書館) 
  J-PARCセンターは、東海村立図書館が開館30周年を迎えた記念事業の一環として、8月29日と30日に開催された図書館まつりに、J-PARCハローサイエンスを出展しました。今回は、磁石の力を使った様々な実験の実演や、クリップモーターのミニ工作教室を開きました。

  「走る乾電池」は大人気で、両側に強力磁石を付けた乾電池がコイルの中をスルスルと動き回り、時にはコイルの上を走ったり、またコイルの中へもぐったりと、思いがけない動きで来場者を魅了しました。また、人の手で乾電池のプラスとマイナスを切り替えて回転させるモーターには、子供たちが次々と挑戦し、コイルの回転に切り替えのタイミングを合わせるのに四苦八苦していました。"世界一簡単なクリップモーター"作りには、子供たち50人程が挑戦しました。子供たちは、出来上がるとモーターのコイルの回転を確認し、とても簡単に出来るモーターに驚いていました。
   
   
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●渡邊昇氏を偲んで  〜 J-PARC核破砕パルス中性子源建設に尽力 〜
 
   パルス中性子科学の礎を築き、その発展に世界的に貢献された渡邊昇高エネルギー加速器研究機構名誉教授 (元J-PARCセンター特別研究員) が8月19日にご逝去されました (享年82) 。渡邊先生は、1980年世界初の中性子散乱用核破砕パルス中性子源KENSを完成させ、J-PARCの大強度中性子源の設計・建設にご尽力されました。2011年にはアジア・オセアニアの中性子科学・技術分野における著しい貢献により第1回AONSA賞を受賞されました。ここに、渡邊先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
   
   J-PARCセンター員一同
   
※「【追悼】渡邊 昇先生  ご逝去にあたって J-PARC MLFディビジョン一同」は、J−PARCホームページをご覧下さい。http://j-parc.jp/ja/topics/2015/topics150908.html
   
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●ご視察者など
    8月   31日  武田 憲昌 文部科学省 原子力課 放射性廃棄物企画室長
    9月     9日  Richard Garrettオーストラリア原子力科学技術機構 シニアアドバイザー
    9月   10日  マレーシア原子力許認可委員会委員長  他4名
   
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