■ J-PARC News 第101号より       (2013/9) 
●下村博文 文部科学大臣へJ-PARC事故に係る改善措置報告書を提出 (9/26) 
  5月23日のJ-PARCハドロン実験施設の放射性物質漏えい事故に対して、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) と日本原子力研究開発機構 (JAEA) は、5月28日に下村文部科学大臣から第三者による有識者会議を設置し、意見を聞きながら安全管理体制や緊急時の手順の再確認を行うよう指導を受けました。6月からの2カ月間で計6回の有識者会議でまとめられた事故原因の調査結果、事故再発防止に関わる改善措置などをもとに、9月26日に両機構より文部科学省へ措置報告書を提出しました。

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●外部有識者を招いての安全講習会「事故防止に向けた安全文化の醸成」
  8月29日、J-PARCセンターは安全、人間工学分野に見識の高い高野研一慶応義塾大学教授を講師に招いて、安全講習会を開催しました。高野教授には、ハドロン実験施設の事故に関わる有識者会議の委員として、事故原因の究明、再発防止策の答申書のまとめに御尽力頂きました。今回、「事故防止に向けた安全文化の醸成について」と題し、原子力科学研究所大講堂を埋め尽くしたJ-PARCセンター員を前に熱のこもった御講演を頂きました。また、有識者会議での審議に必要となった安全関係のデータ取りまとめを行ったJ-PARCセンターの春日井好己中性子源セクションサブリーダーが、「ハドロン事故の問題点と今後の安全管理について」と題して、なぜ事故が起きたのか、異常を察知した場合の新たな体制などについて講演を行いました。



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●茨城県原子力安全対策委員会でハドロン実験施設の事故を検証
  9月10日、茨城県原子力安全対策委員会 (委員長:岡本孝司東京大学大学院教授) が水戸合同庁舎で開催され、主な議題としてJ-PARCハドロン実験施設での事故が取り上げられました。今回の事故で茨城県に提出した「事故・故障等発生報告書 (第三報) 」やJ-PARCセンターからのプレゼンテーションをもとに、原子炉や加速器、放射線、さらに安全工学等の分野の専門家7名により審議が行われました。審議の後、委員長より、ハードウェア面の対策をしっかり進めるとともに、ソフトウェア面での新しい安全管理体制を実効性のあるものに改善していき、不断の安全意識の向上、人材の育成にも努めてほしいとのまとめの言葉を頂きました。また、それを実現するには、県の協力が不可欠であるとの助言も添えられました。
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●物質・生命科学実験施設 (MLF) で放射線事故を想定した訓練、及びJ-PARC自主防災訓練を実施
  J-PARCセンターでは、ハドロン実験施設の事故を受け異常に対応する体制を見直し、有識者会議での評価を受け原子力規制委員会などへ報告しました。今回、「注意体制」を導入した新しい緊急時の体制に基づき、9月13日にMLFで放射線事故対応訓練を実施しました。陽子ビームの標的である水銀の漏えい事故を想定したもので、13:30にターゲット保護システム (TPS:Target Protection System) に組み込まれている水銀漏えい検出装置の1つが作動しMLF制御室で警報が発報、運転監視員が誤報で無いことを確認することで訓練が開始されました。水銀循環系での異常の兆候を確認したことで「注意体制」に移行し、 MLFシフトリーダーからの電話連絡や今回導入した緊急連絡システム (EMC:Emergency Call) などで事故対応関係者に連絡が取られました。それに伴い、MLF施設管理責任者を事故現場統括責任者とする事故現場指揮所がMLF制御室に立ち上げられました。事故現場指揮所で状況の確認を行った結果、「事故体制」への移行が決定されました。そして、実験ホール内実験者等の屋外避難、水銀漏えい個所の確認、放射性物質の漏えい停止措置など、放射線事故を想定した一連の訓練を実施し、16時頃に訓練を終了しました。今回の訓練により、見直すべき点などがいくつか確認されました。今後、J-PARCの他施設においてもこのような放射線事故を想定した対応訓練を実施し、より高い安全を確保していきます。

  また、9月5日には原子力科学研究所と合同でJ-PARC自主防災訓練を実施しました。13時30分に大地震が発生したことを想定し、指定避難場所への避難、各部署における人員掌握、J-PARC地震対策指揮所への報告、そして原子力科学研究所の防護活動本部への報告と、一連の訓練を約30分程度で行えることが確認されました。


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●東海村原子力安全対策懇談会
  9月4日、東海村の原子力安全対策懇談会が原子力科学研究所を会場に開催されました。冒頭、日本原子力研究開発機構 (JAEA) の横溝英明理事、および高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の峠暢一理事がハドロン実験施設の事故について深くお詫び致しました。懇談会は、「J-PARCハドロン実験施設の事故調査の現状」と、「今後の事故調査に係る安全対策」を議題とし、加藤崇J-PARC副センター長が、事故調査の現状と安全対策などについて説明を行いました。その後、ハドロン実験施設と物質・生命科学実験施設 (MLF) をご視察し、関係者から施設の説明を受けました。ハドロン実験施設では、事故の詳細についての説明も受け、質問や意見を多数頂きました。
  ※出席者:
     東海村:村上達也東海村長、懇談会委員 (11名) 、役場関係者 (4名) 
     JAEA:横溝英明理事、富田英二東海開発センター副センター長
     KEK:峠暢一理事
     J-PARCセンター:池田裕二郎センター長、加藤崇副センター長、齊藤直人副センター長


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●文部科学省 群分離・核変換技術評価作業部会
  群分離・核変換技術研究は、長寿命放射性廃棄物の処分に係わる重要な位置付けにある研究と考えられるもので、今年7月に文部科学省科学技術・学術審議会に評価作業部会が設置されました。8月7日の初部会に続き、第2回部会 (9月9日) 、第3回部会 (9月13日) が文部科学省で開催されました。これらの部会では、放射性物質の半減期の長さの違いで分離・分類する群分離研究、核変換技術研究のための加速器駆動システムADS (Accelerator Driven System) の研究開発状況、核変換実験施設 (TEF:Transmutation Experimental Facility) の検討状況、これら研究に携わる研究者などの人材育成、欧州ベルギーでADS実証を狙ったMYRRHA計画などとの国際協力の意義や必要性などが議論されました。
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委員の方からは、本研究の課題や達成度の解析に必要なデータ整理、加速器の改造など施設建設費以外に必要な費用の積算、使用済み核燃料などに含まれる超長寿命核種であるマイナーアクチニド (MA) 試料などの照射後試験を計画通り進める手順や施設の確保状況などを、次回の部会で示すようにとのコメントがありました。
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●中性子利用に関わる研究会での報告
  平成25年度、中性子産業利用推進協議会では、企業の感心が深い中性子利用分野10テーマの研究会活動を計画し、7月から2015年2月にかけて20以上の研究会、講習会を予定しています。9月には以下の2分野における研究会が開催され、J-PARCからそれぞれ報告を行いました。
 < 平成25年度 第1回ソフトマター中性子散乱研究会 > 
  9月6日、昨年開催の研究会に続く標記研究会が、東京の研究社英語センターで開催されました。研究会は、前回に引き続き、「画像と小角散乱」がテーマとして取り上げられ、幹事の小泉智茨城大学教授の開会挨拶で開始されました。茨城県企画部の林眞琴技監が、「J-PARCの状況と産業利用」と題して、物質・生命科学実験施設 (MLF) の現状、茨城県中性子ビームライン (BL) の研究成果、ならびに2013A期 (平成25年4月〜7月) における課題採択結果などを紹介されました。

  研究会では、チュートリアル (実験手法などの紹介、4件) 、産業界のニーズ (2件) の講演が行われました。J-PARCセンター中性子利用セクションの鈴谷賢太郎氏 (日本原子力研究開発機構研究主幹) は、ガラスや高分子など非晶質材料のイオン伝導や粘性など固有の物性を理解するために、原子間距離レベルでの局所構造を超えた少し広いスケールにおける構造モデルの規則性 (中距離秩序と呼ばれる) などを観察する手法や、その解析法 (逆モンテカルロ法など) を紹介しました。詳細は、中性子産業利用推進協議会のホームページ、研究会報告などをご覧下さい。

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 < 第1回残留ひずみ・応力解析研究会 > 
  9月17日、平成25年度第1回残留ひずみ・応力解析研究会が、東京の研究社英語センターで開催されました。研究会は、幹事の鈴木裕士氏 (日本原子力研究開発機構研究副主幹) の挨拶で開始されました。茨城県企画部の林眞琴技監が、J-PARCハドロン実験施設の事故について簡単な紹介を行い、MLFの現状及び茨城県中性子ビームラインの現状と得られた成果の一例、ならびに2013B期 (平成26年2月〜3月) における産業利用の課題採択結果などを紹介されました。

  研究会では、基調講演 (1件) 、装置開発の現状 (3件) 、ユーザー報告 (2件) の講演が行われ、装置開発の現状で、MLFのBL19に設置されている工学材料回折装置「TAKUMI (匠) 」の現状と最近の成果などを、装置副責任者のJ-PARC中性子利用セクション ステファヌス・ハルヨ氏 (日本原子力研究開発機構研究副主幹) が報告しました。「TAKUMI」は、材料・機械工学の分野における様々な研究を推進するための中性子回折装置で、その性能、試料周辺環境装置の整備状況、実施可能な実験項目を紹介しました。また、最近の実験成果として、国際熱核融合実験炉 (ITER) の超伝導ケーブル導体内部ひずみ測定で超伝導特性の劣化原因の解明、コンクリート内に埋め込んだ鉄筋内の内部ひずみの測定で、コンクリートと鉄筋の結合力を精度よく測定した TRIP鋼 (自動車などの構造体などに使われる鉄鋼) の変形機構など、合わせて6件の研究成果について報告しました。これら成果は、MLFが震災復旧を終えて、平成24年1月以降の利用運転再開後に得られたもので、「TAKUMI」の完全復旧が裏付けられました。また、現在進めている、ひずみ・応力測定の最適化、データ処理手法の改善、新試料周辺環境装置の開発状況なども紹介しました。詳細は、中性子産業利用推進協議会のホームページや、研究会活動報告などをご覧下さい。

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●J-PARC事故に係る法令報告 (第三報) に対する原子力規制委員会の評価について
  5月23日に発生したJ-PARCハドロン実験施設における放射性物質の漏えい事故で、高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 及び日本原子力研究開発機構 (JAEA) は8月12日に、放射線障害防止法に基づく法令報告 (第三報) を原子力規制委員会に提出しました。その報告書が8月21日に開催された第19回原子力規制委員会で審議され、事故再発防止に係るハードウェア対策に関する事故事象の推定や、それらに対する対応については概ね妥当と評価されました。一方、安全管理体制について実効性の確認が必要であり、再発防止策が確実に履行されていることを確認していくとのことでした。詳細については、原子力規制委員会のホームページをご覧願います。

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●高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 一般公開で、「安全に関する取り組み」についてパネル展示
  KEKは9月8日に恒例の一般公開を実施し、約4,300名の来場者を迎えました。KEKと日本原子力研究開発機構 (JAEA) が運営するJ-PARCセンターは、ハドロン実験施設での放射性物質漏えい事故に対して、事故原因の究明、今後の対策や安全体制の見直しなどを進めてきました。今回、パネル展示コーナーを設け、事故に係る説明、また安全に関する取り組み状況を紹介しました。

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●ご視察等
     9月 4日
        Dr.V.Venugopal インド原子力学会副会長、
        バーバ原子力研究センター(BARC:Bhabha Atomic Research Center)の
        ラジャ・ラマンナ フェロー、
        Shri.S.A. Bhardwaj BARCホミ・バーバ国立研究所教授、他

     9月 4日
        村上達也東海村長、東海村原子力安全対策懇談会御一行

     9月12日
        大土井智 文部科学省研究振興局 基礎研究振興課 素粒子・原子核研究推進室長



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