■ J-PARC News 第32号より       (2007/11) 
●3GeVシンクロトロンのビームの加速、取出しに成功
 建設を進めてきた3GeVシンクロトロン* は、平成19年9月28日に加速器試験を開始し、10日間の調整試験後に2週間の試験停止を挟んで10月22日から試験を再開、26日に181MeVでのビーム入射、周回、高周波捕獲及び出射(陽子ビーム輸送ラインに設置のビームダンプへ)を確認した。更に10月31日14時03分にはエネルギー3GeVへの陽子ビームの加速及びビーム取出しに成功した。RCS調整開始後、都合20日間で当初の目標を達成し、順調に調整試験が進められている。
 今後はさらにビーム試験を重ね、徐々に陽子ビーム強度を増加させ、平成20年春頃に3GeVシンクロトロンに続く「物質・生命科学実験施設」や、第3段加速器の50GeVシンクロトロンにビームを入射する計画である。
*:3GeVシンクロトロン(RCS:Rapid-Cycling Synchrotron)。リニアックから入射された181MeV(1億8千100万電子ボルト、光速の約50%のスピード)の陽子ビームを、20msecで3GeV(30億電子ボルト、光速の約97%のスピード)まで加速する世界最高性能の陽子シンクロトロン。

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●3GeV陽子ビーム輸送施設(3NBT)でビーム試験開始
 3GeVシンクロトロンのビーム試験において、加速器を周回した陽子ビームはキッカー電磁石により3NBT陽子ビームラインに出射され、約50m先に設置された垂直偏向電磁石によりビームダンプに輸送され、停止する。今回、3GeV加速試験において陽子ビームをビーム輸送ラインに設置しているビームプロファイルモニター、ビームモニターで追跡し、問題無くビームダンプに輸送されたことを確認した。 http://j-parc.jp/MatLife/ja/news/071107.htmlもご参照願います。
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●産業利用促進に向けた活動
 中性子利用等の産業利用促進に向け、「つくばカピオ会議場」や「東京経団連会館」で開催されたセミナー等で、茨城県等と協力してJーPARCを紹介した。JーPARCの全体模型、パネル及びDVD等を準備し、センター員が全体概要、施設や装置整備の進捗状況及び研究内容等について紹介を行った。
(1)「いばらきものづくり交流会 in つくば ー ものづくり & IT フェア ー」
 平成19年10月25〜26日、「つくばカピオ会議場」にて開催された。フェア* は茨城県内の50を超える企業、団体が参加し、企業がもつ科学技術から生まれた製品等を紹介したもので、多数の企業参加者がJーPARCブースを訪れた。JーPARCの産学連携に貢献する可能性について等の質問があった。また、別の展示フロアでは茨城県が整備する中性子ビームライン2本についての紹介が行われた。
*:主催は、茨城県、(財)茨城県中小企業振興公社、つくば市、及びつくば市商工会。医療・福祉分野、情報・通信分野、環境分野等の最先端な製品の展示と説明が行われた。催しは、10月25日のNHKテレビで放映された。

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(2)「いばらき産業立地セミナー」
 平成19年11月22日、茨城県主催で、茨城県内の優れた企業環境を紹介する「いばらき産業立地セミナー」が東京経団連会館にて開催され、県内工業団地や港湾の概要説明会と交流会が行われた。会場には、JーPARCの紹介コーナーが設けられ、茨城県の中性子ビームラインを含めた研究施設の説明に、多くのセミナー参加者が足を止めて聞き入っていた。

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●特集:JーPARCを利用して出来ること
< 例えば、大容量小型電池の開発 >
 携帯電話軽量化、携帯端末の一層の小型化、また近年のCO2排出削減対策として実用化が望まれる電気自動車の開発などに高性能電池の開発は不可欠である。JーPARCを利用して、軽量、高性能であるリチウムイオン電池などの研究開発が更に進展することが期待されている。
 開発に利用出来る装置の一例として、茨城県材料構造解析装置は水素やリチウムのような軽い原子の位置や量について測定することが可能になる。

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●施設建設状況
(1) 加速器関連
 リニアック、3GeVシンクロトロンは加速試験を継続実施。50GeVシンクロトロンは、電磁石の精密アライメント、電源ケーブルの敷設作業を継続中。
(2) 実験施設関連
 物質・生命科学実験施設は、中性子源の反射体等の遠隔脱着操作試験を実施。中性子ビームラインでは遮蔽体据付工事、建屋東側に建設の長尺ビームライン建屋建設工事を進めた。原子核素粒子実験施設は、リサイクル鉄遮蔽体の搬入が行われた。ニュートリノ実験施設は、設備棟建設工事、大型ヘリウム容器の真空漏洩試験、ディケイボリューム下流部掘削作業、モニター棟のコンクリート地中連壁工事等を継続中。

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●JーPARC中性子源の水銀連続循環試験に成功(物質・生命科学実験施設)
 物質・生命科学実験施設の中性子源ターゲット容器の水銀循環設備に、水銀シール機構の無い永久磁石回転式電磁ポンプを助川電気工業(株)の協力を得て新たに開発した(特許出願中)。今回、新たに製作された電磁ポンプをターゲット台車の水銀循環系に組込み実運転を行った結果、大容量の水銀(総量約20トン)を安定してターゲット容器に循環出来ることを確認した(平成19年11月1日プレス発表)
*:関連記事として、J-PARC News31号の「永久磁石回転式電磁ポンプの開発」
http://j-parc.jp/ja/news/2007/news-j0710.html#Constructionもご覧下さい。

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●50GeVシンクロトロン(MR)ビームコリメータの搬入・据付け
 50GeVシンクロトロンの陽子ビーム入射部ストレートセクションに設置するビーム整形用コリメータ* 3台とアブソーバ1台が11月上旬よりトンネルに搬入され、組立て据付けが行われた。コリメータ本体へのビームダクトの組込みは、来年2月に遮蔽ブロック上部を取外して実施する予定。
*:ビームコリメータは、主リング内を周回するビームのハロー成分を取り除くためのもの。「Jaw」と呼ばれるブロック形状の金属片をコリメータ本体に組込むビームダクト内部に2個ずつ有する。またコリメータ本体のほぼ中央に配置され、ビーム一周毎に上下および左右について2回ずつハローの除去を行う。ハローの除去量を調節するために「Jaw」はそれぞれが独立に移動できる構造となっている。 ビームハローの除去は極めて高い放射線が発生するため本体は鉄ブロックによる遮蔽構造とし、また、コリメータ1台あたりのビームロスは最大450W相当が見込まれるので、熱除去のため「Jaw」自体を水冷構造としている。

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