■ J-PARC News 第17号より       (2006/8) 

●建物建設状況
(1) リニアック棟では、イオン源周辺機器のケーブル接続、真空ダクトの取付、各種保護インターロック試験を実施中。また、加速器空洞の調整運転を継続中。3GeVシンクロトロン棟では、電磁石の搬入、真空ダクトの組込・据付、真空システム関連の工事を進めている。3NBTトンネルでは、電磁石の搬入、ビームダクト架台の据付・調整を実施中。
(2) 50GeVシンクロトロンでは、D工区トンネル部の盛土・法面整形・矢板引抜工事を、トンネル内部では、壁・床・天井の仕上塗装工事を実施中。トンネル完成部分では電磁石の搬入据付を継続中。また関連建家では、躯体の仕上塗装工事等を進めている。
(3) 物質・生命科学実験施設では、建家内・外部の仕上工事及び外構工事を進めている。また、ビームトンネル遮蔽体仮開口部の鉄筋組上・コンクリート打設工事を実施中。なお、中性子ビーム遮蔽体の据付など実験装置関連の工事も同時に行っている。
(4) ハドロン実験施設では、実験ホールの壁躯体工事を継続中。またスイッチヤード下流部では、防水工事や擁壁工事を、ニュートリノ実験施設のトンネルアーク部(陽子ビーム導入部)では、トンネル部の埋戻・盛土や躯体内部の塗装工事を進めている。

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●クライストロン電源システムの大電力試験
 リニアック用クライストロン電源システムについて、平成18年1月から三相6.6KVを受電しての大電力試験を行った。当電源システムは、6台のカソード高圧直流電源(以下、“HVPS”=High Voltage Power Supplyと略記)、21台の断路器盤とM・アノードパルス変調器、およびそれらを制御する制御盤で構成されている。 HVPS1台当りクライストロン4台の4負荷並列運転を行う計画で、リニアックの加速空洞のエージングをこの10月に開始する。これまで324MHzクライストロン23台の試験をHVPS4号機、及び5号機を使った1負荷運転で実施し、総運転時間が各々約370時間、500時間となった。 これまでの試験で、電源システムは設計範囲の入力変動においてはカソード電圧の時間変動は常に0.2%以下に抑えられる事が確認され、電源システムが十分な性能を有している事が認められた。

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●3GeVシンクロトロンビーム出射用キッカー電磁石の磁場測定
 3GeVシンクロトロン(RCS)のビーム出射用キッカー電磁石は、3GeVまで加速されたビームを物質・生命科学実験施設や50GeVシンクロトロンへのビーム輸送系へ送り出す役目を持っており、RCS出射ラインに8台設置される。それら電磁石のフェライト鉄心はC型構造で、ビームサイズに応じて3種類の異なるギャップサイズで設計されている。 本キッカー電磁石は通常充電電圧60kV(励磁電流 3000A)と云う高電圧で使用するため絶縁性の面から真空環境下での動作が必要で、今回実機を完成させ真空中での磁場測定試験等を実施した。電磁石を実際に使用する充電電圧60kV及び繰返し周期25Hzで運転し、磁場をサーチコイルを用いて測定した。 これまで8時間の連続運転を数回実施したが、大きな問題はなく通電試験は成功している。下図に、同じ型2台のキッカー電磁石についての磁場波形測定結果の比較を示したが、波形の差はフラットトップ部で0.1%以下の精度で一致している。これら通常運転電圧までの電圧印加試験、及び同型電磁石の出力精度確認等で良好な結果が得られている。

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●3-50BT可動型コリメータの設置
 50GeVシンクロトロンの入射ビームサイズは54π mm mradに設計されているが、3GeVシンクロトロンからの陽子ビームはビームハロー(ビームコア周りの外側に不要に広がるビーム)を含めて216π mm mrad以下となっている。よってそのビーム輸送ライン(3-50BT)にはビームコリメータを設置しビームハローを取除く必要がある。 コリメータは、ビームラインの四極電磁石間にコリメータ位置の調整可能な可動型2台を1組として6個所据付けられ、また最後部に同じく固定型1台が据付けられて合計13台となる。鉄シールドユニットの内側に組み込まれるコリメータダクトには「jaw」と呼ばれる厚さ25mmのL型構造のタンタルブロックが取り付けられ、ダクト及び鉄シールドと一緒に上下、左右に動くこ とによってビームハローがカットされる。 「jaw」は上下、左右に±10mm動くが、それらの前後のビームパイプとの繋ぎ部には、それら変位を吸収すべく関節機構が持たせられており、それらはスムースな動きであることが確認されている。これら3-50BTのビームコリメータの据付けを8月中に終了した。

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●50GeVシンクロトロン用セプタム電磁石系の総合電源特性試験
 J-PARC主リング50GeVシンクロトロン(MR)の速いビーム取り出し装置に用いられるセプタム電磁石・電源系の各種試験を、KEKつくばキャンパスの富士実験室地下4階ホール(富士B4)で行っている。これらの装置は、MRの周回ビームをニュートリノ振動実験ラインに向けて取り出すと同時に、緊急のマシン不具合時にはビームをアボートラインに取り出す役割も兼ね備えている。そのために、ビーム取り出しに用いられるキッカー電磁石・セプタム電磁石の全てに対して、他に類例の無い両極性取り出し機能が要求されている。
 セプタム電磁石・電源系の試験配置状況を写真1に示す。富士B4での主要な試験項目としては着脱機構試験と磁場特性試験がある。着脱機構開発は、加速器運転に伴いセプタム電磁石が高レベルに放射化する可能性が高いため、故障等における機器交換作業時に少ない被爆量とするために重要なものである。セプタム電磁石交換は床に固定された位置再現機構によりスムースに行われるもので、電磁石アラインメント位置の再現性はレーザートラッカーを用いて確認している。
 磁場特性試験の前段階となる電源立上げ試験では、ダミー負荷を用いて電源の健全な動作確認を行うもので、工場出荷時と同等の試験結果が再現されている。更に引き続き4台の高磁場セプタム電磁石を用いた実負荷通電試験を開始している。これまでに短時間ではあるが最大定格電流4480Aを通電して、ほぼ設計値通りの1.64Tの磁場発生を確認している。今後は電磁石の詳細な磁場測定・漏れ磁場対策・各部振動測定等を行う予定である。

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●中性子ビーム実験装置の研究開発に係る説明会 茨城県材料構造解析装置、他
 平成18年7月20日、茨城県企画部主催で「中性子ビーム実験装置の研究開発に係る説明会」が、(株)ひたちなかテクノセンターにて開催された。茨城県がJ-PARCの協力のもと整備を進める2本のビームラインを利用した研究開発についての地元企業への概要説明会と、各企業がこれら研究開発や機器製作等への参画を模索する個別面談が行われた。企業参加は70社程度、90名程度が参加された。 2台の装置は材料構造解析装置と生命物質構造解析装置。今回、材料構造解析装置については原子力機構・量子ビーム応用研究部門・パルス中性子装置開発研究グループの石垣特定課題推進員が研究概要、装置について報告を行った。この機会を有効に活用して是非とも県内企業にはJ-PARCへの参入を図っていただくことを期待している。

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