平成29年3月21日

J-PARCセンター

  

新たな種類の原子核“グザイハイパー核”発見で日本物理学会第22回論文賞を受賞

  

  J-PARCハドロン施設では、複数のクォークが強い力で結合してできた粒子であるハドロンを詳しく調べ、物質の根元や中性子星の謎を解明する研究が行われています。そのひとつに、ストレンジクォークが2つ含まれる原子核を、原子核乾板 (写真フィルム) を用いて研究するE07実験という実験があります。

  同実験を進める岐阜大学やJ-PARCの研究者らのグループは、E07実験に向けて「全面スキャン法」という方法を開発しました。一方、1997年から2000年にKEKつくばキャンパスの陽子加速器で行った実験によって、陽子ビームから生成されるK-ビームを照射した原子核乾板が保存されており、研究グループは、今回開発した方法でこれらを再解析し、「グザイハイパー核」という新たな種類の原子核を発見しました。この原子核をさらに詳しく調べた結果、陽子や中性子の仲間で、ストレンジクォーク2個が含まれる粒子であるグザイ粒子と、陽子や中性子の間に働く力が引力であり、さらに中性子星の内部にグザイ粒子が含まれる可能性が示唆されました。この成果は、論文として2015年に報告され、このたび、日本物理学会第22回論文賞を受賞しました。

  論文賞は、独創的な論文の発表により、物理学の進歩に重要な貢献をした研究者の功績を称えるために授与されるもので、表彰件数は毎年5編以内、該当する論文がない場合には表彰は行われないこととされています。今回は、5編の論文に対して与えられました。

  E07実験は、岐阜学教育学部及び工学研究科の仲澤 和馬 教授を責任者とする6か国から30機関が参加する国際共同研究実験で、2016年5月にコミッショニングを開始しました。2017年4月から再開される実験では、従来からの解析法である「ハイブリッド法」や、開発した「全面スキャン法」を駆使して、今回発見されたグザイハイパー核や、それとは別の種類のラムダ粒子 (ストレンジクォークが1つ含まれる陽子や中性子の仲間) が2つ含まれるダブルラムダハイパー核を100個以上観測・測定し、グザイ粒子、ラムダ粒子に働く力の詳細を明らかにする予定です。



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