J-PARCセンター
2013年3月26日
木村敦氏、日本原子力学会賞「論文賞」を受賞
  原子炉の運転にともない発生する使用済み核燃料中には、数万〜数十万年と長い期間にわたり放射線を放出する放射性核種 (MA:マイナーアクチノイド核種) や長寿命核分裂生成物 (LLFP) 等が含まれている。このような物質を分離抽出して中性子を照射し短寿命化することで、地層処分などでの環境負荷の低減化を図る事が考えられている。その効果を事前に評価するには、それら核種の中性子捕獲反応断面積 (反応の度合を表す数値、単位:barn) を精度良く測定することが必要である。
  J-PARC物質・生命科学実験施設 (MLF) のBL04に設置された中性子核反応測定装置 (ANNRI、 写真1〜2) は、大強度パルス中性子源と高性能ガンマ線検出器により、高い精度で捕獲反応断面積の測定が出来るよう設計された実験装置である。装置は、試料とするMA核種などに強力なパルス中性子を照射し、中性子捕獲により放出される即発ガンマ線を、全立体角Ge (ゲルマニウム) スペクトロメーターで精度良く検出するものである。
  これまで、使用済み核燃料中に含まれる244Cm及び246CmなどのMAは、その核種自体の崩壊で発生する放射線により測定バックグラウンド (ノイズ) が高く、中性子捕獲による即発ガンマ線の測定が非常に困難なため、入射する中性子エネルギーが数eV付近から上のエネルギー領域 (共鳴領域と呼ばれる) での測定データは1969年に行われた原爆実験による1件のみであった。今回、木村氏 (写真3) らはANNRIを用いて、 244Cmの中性子捕獲反応断面積を2〜300eVのエネルギー範囲で高精度に測定できることを実証した (図1) 。この結果は、今後高い放射能の試料に対する捕獲断面積測定の有効性を示したこととなり、この成果が評価され今回の受賞となった。
  注1) 論文題目:「Neutron-capture cross-sections of 244Cm and 246Cm measured with an array of large germanium detectors in the ANNRI at J-PARC/MLF」

※注2) 受賞者:木村敦研究副主幹
 (原子力基礎工学研究部門応用核物理研究グループ  (兼) J-PARCセンター中性子利用セクション、JAEA) 、後神進史主任研究員 (元原子力基礎工学研究部門応用核物理研究グループ特定課題推進員、現在JNES:独立行政法人原子力安全基盤機構) 、及び 藤井俊行准教授 (京都大学原子炉実験所) 。

※3) 中性子核反応測定装置 (ANNRI) 
文部科学省委託事業として開発された中性子実験装置。平成23年6月、日本原子力研究開発機構が文部科学省より物品無償貸与の承認を受け、「パルス中性子を用いた原子核科学研究及び中性子核反応測定装置を用いた測定・分析技術の促進」を目的に使用することが認められた。



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